石正園
せきしょうえん
住宅庭園の設計施工を請け負う石正園の代表・平井孝幸さんは、「雑木(ぞうき)の庭」の名人として知られ、庭の実例や手入れ方法などを紹介する本の執筆のほかテレビ出演、大学での講義など、多方面で活躍する作庭家です。雑木とは、コナラやクヌギなど、かつては炭や薪として活用された里山の落葉広葉樹のこと。この雑木を使って景観をつくる庭園手法「雑木の庭」は、近代庭園の巨匠・飯田十基(1890〜1977)によって創始されました。
高校在学中に植木屋になろうと決めた平井さんは、休日を利用して全国の名園を見て回ったそうです。東京農業大学造園学科の2年生のとき、渋谷区初台にあった飯田氏の自邸を訪ね、まるで林の中にいるような、さわやかな空気が流れる庭に衝撃を受けました。自分もこんな庭がつくれる作庭家になりたいと飯田氏に教えを請うたところ、まず植木の地掘り(掘り取り)を覚えるようにと言われます。2年で植物の性質がわかるようになり、さらに「庭は石組から、植栽はあと」という教えを受け、十数年かけて石灯籠の時代考証ができる見識を身につけました。
「雑木の庭」の魅力は、春の芽吹き、夏の緑、秋の紅葉、冬木立と、都会にいても四季が楽しめるところにあると平井さんは話します。「伝統的な庭は下枝を大切にしますが、雑木の庭は下枝を払うのです。それが雑木林の自然な姿だからです。上に樹冠が広がって、木もれ日が揺れるんですよ」。まるで避暑地にいるような、さわやかな庭の様子が目に浮かびます。
レッドシダーとコンクリートの袖垣にイワガラミをからませて。野性を感じさせるつる性植物の生命力が魅力的です。
お茶の稽古で、斬新なデザインで知られる人間国宝・長野垤志(てつし)の釜に刺激を受けた平井さんは、水鉢にも現代性が必要と、自ら創作を始めました。
宝篋印塔の傘をひっくり返し、穴を開けて水鉢に転用。
事務所脇のスペースにも水鉢や石灯籠が並びます。なかには奈良時代までさかのぼる貴重な礎石や年代物の石灯籠も。下の写真は桂離宮松琴亭の石灯籠を模した石正園オリジナル。
広大な敷地の一角には、形も大きさも制作年代もさまざまな水鉢、石灯籠、石仏、石像がところ狭しと置かれています。
塩ビパイプとコンクリート、レッドシダーのシダーシェイクで建てた塀には、意外性と遊び心があります。
手斧削りのレッドシダーとコンクリートの袖垣。
「雑木は生命力が強く、生長が早いため管理が大切です」と語る平井さん。植え付けから完成形になるまで、ほぼ3年。そのころから本格的な剪定を始めて適切に管理し、美しい「雑木の庭」に育てていくのです。
平井さんの作庭された三鷹学園
住所 | 東京都西東京市新町3-7-2 |
TEL | 0422-52-1058 |
FAX | 0422-53-9647 |
アクセス |
西武新宿線「田無駅」南口から徒歩18分。または北口からタクシー5分 |