村瀬治兵衛 / 嘉門工藝
むらせじへえ / かもんこうげい
松陰神社前駅から庶民的な商店街を抜けた先の住宅街に、漆工芸家の三代村瀬治兵衛さんの自宅兼工房はあります。木地師と塗師(ぬし)、両方の技を駆使するその制作スタイルは、名古屋で江戸時代から続く木地師の家に生まれた祖父、初代治兵衛に遡ります。薄挽きを得意とした初代は、美術家・北大路魯山人の指導を受けて塗師の仕事も手がけるようになり、やがて独自の作風を確立しました。
父である二代治兵衛は昭和35年(1960)ごろ、大徳寺の第511世住持だった立花大亀老師と出会い、大亀老師を囲む数寄者や料亭主人、政財界人との交流から茶道具や懐石道具を作るようになりました。そして三代治兵衛さんの転機となったのは、陶磁器研究家・林屋晴三先生との出会いでした。古典を写す仕事を20年間続け、“日本の形”を体得した三代治兵衛さんに、先生は「今を生きる、新たな形」への挑戦を求めました。現代作家の作品を中心に行う茶会も、先生の勧めで始めたものです。
立花大亀老師はじめ多くの茶人が訪れる家で育った三代治兵衛さんにとって、お茶は暮らしの中に普通にあるもの。10年ほど前に妻の亜里さんを社長として茶道具の企画・制作・販売を手がける会社「嘉門工藝」を立ち上げたのも、お茶の魅力を知ってもらい、工芸にも興味を持ってもらえたらという願いからでした。
現代作家の作品でしつらえた自宅2階の和室。立花大亀老師とのご縁から譲り受けた大徳寺三門の柱を金毛閣の古材を床柱にしています。床は写真家・六田知弘さんの掛け軸「那智の滝」、三代村瀬治兵衛さんの欅筒花入れ、神代欅削ぎ香合。点前座は染織家・玉村咏さんの風炉先、内田繁さんの四方切合風炉釜、大角幸枝さんの建水、小川待子さんの黒釉碗、治兵衛さんの欅白木水指、朱塗鉈削(なたそぎ)中次。
茶器2点。左は縹色阿古陀型茶器、右は一閑張彩漆中次。
茶器3点。左から根来塗しのぎ中次、木瓜形茶器、根来塗しのぎ薬器。
茶器2点。左は銀彩鉈削中次(欅)、右は欅鉈削中次。
水指3点。手前は欅阿古陀型水指、左は五角彩漆水指、右は銀彩鉈削水指。五角彩漆水指の蓋は乾漆粉仕上げ。
根来塗輪花盆と欅の高坏(たかつき)。高坏の脚はアール・デコを意識したデザイン。食べ物にかぎらずオブジェや花を飾っても映える脚付きの器は、海外でも人気です。
大振りの蕪の絵の鉢(桜)に栗ようかんを盛り付けました。
おもてなし茶箱「白雪姫」(赤)のモチーフは、白雪姫のりんご。茶碗・茶碗袋、茶器・茶器袋、りんご振出を白銅建水に入れれば、茶杓・茶杓袋、茶巾・茶巾筒、茶筅・茶筅筒、古袱紗とともに桜材のオーバルボックスにきれいに収納できます。芸術性と機能性を併せ持つ、嘉門工藝人気の商品の一つです。
フランス直輸入の生地を使った数寄屋袋も人気。左は「仏蘭西布手縫い数寄屋袋」、右の2点は「仏シノワズリ数寄屋袋セット」(白蝶貝の福楊枝、楊枝入れ、懐紙付き)。
村瀬治兵衛さんと亜里さん。お二人が着ているのは、衣作家・真砂三千代さんが創作した「茶衣(さい)」。
所在地 | 東京都世田谷区上馬5-27-3 |
TEL | 03-3421-6887 |
FAX | 03-3419-1400 |
メールアドレス | info@kimonodaimatsu.co.jp |
電話での商品注文受付 | 10:00〜17:00(月〜金曜) |
アクセス | 東急世田谷線「松陰神社前駅」から徒歩11分 |