月窓軒
八畳間(次の間六畳)
大日本麦酒の社長を務めた財界人の馬越恭平氏は、圓成庵や不昧軒建設にも協力した数寄者でもありました。月窓軒は、馬越氏の没後、昭和10年(1935)5月にその子息が寄進した茶室です。護国寺の茶寮群の西端に位置し、入母屋造りの桟瓦葺きで平側に四枚障子の上がり口が設えられています。
護国寺山内の茶室の多くは月を望める立地にありますが、その名に「月」を冠している月窓軒からは、月は眺められません。しかし、月窓軒の北側には付書院が備えられ、その窓の向こうには大型の手水が据え置かれています。そこに満ちた水面に月が美しく映るのです。
茶室は八畳広間で、襖を開け放つとさらに次の間の六畳が続き、十四畳の広間としても使用することができます。次の間六畳にも炉が切られています。護国寺には簡素な意匠の茶室が多いですが、月窓軒は、襖に瓢紋の引手が用いられ、框や襖の桟には赤い溜塗が施されており美しい光彩を放っています。床脇には琵琶台が設けられ、落ち着きの中にも華やかさのある書院の茶室空間となっています。
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形状 八畳 + 次の間六畳 |
天井 杉板竿縁天井 |
床柱 赤松皮付:径3.6寸(10.9cm) つらなし |
床框 面皮 赤溜塗 |
床の間 花入釘 有、 落掛 杉柾目 見付1.5寸(4.5cm) |
その他 無双釘無、花釘有:高さ床框上より4.08尺(123.6cm)、花蛭釘有、釜蛭釘有、 琵琶台:杉杢板 高さ8.1寸(24.5cm) 2.6尺(78.8cm)四方、 付書院:腰高1.1尺(33.3cm) 間口4.15尺(125.8cm) |