大学生による体験レポート
武家茶道 月釜会
文・立教大学茶道部3年 細川夏佳
東京都・練馬区にある白瀧呉服店のお茶室にて、武家茶道として有名な石州流野村派のお家元である堀先生が開かれた月釜に参加させていただきました。地下鉄赤塚駅の目の前にある2階建ての大きな建物が白瀧呉服店で、その建物の中庭を進んだ先にお茶室がありました。
堀先生にお茶室まで案内していただき、躙口の入り方を教えていただきました。普段のお稽古や学生同士の茶会では躙口からお茶室に入る機会は少ないのでとても勉強になりました。
薄茶・運びのお点前で、お道具の扱いやお点前の動作など、普段お稽古している裏千家の動きとは違うところが多くとても興味深く拝見しました。石州流は、江戸幕府四代将軍家綱公の茶道指南役に推挙された片桐石見守石州を流祖とする武家茶道の流派の一つであり、以来、秋田や会津、新潟、高松などそれぞれの地方に根付いて独立している流派だそうです。お湯をお茶碗に注ぐ際、柄杓の合から落ちるお湯の動きに合わせるようにふんわりと柄杓を動かしていらっしゃったのが、とても軽やかで印象に残りました。
堀先生は新潟県・長岡のご出身で、床やお道具には新潟県に由来するものが多く選ばれていました。軸は「天上大風」、新潟県と縁の深い良寛和尚のお筆の写しでした。花入や水指、お茶碗は新潟県の陶芸家・今千春さんの作品で、どれも個性的で素敵なものばかりでした。お菓子は日本三銘菓のひとつ・越乃雪で有名な越乃雪本舗大和屋さんのつつじの生菓子で、初夏らしいみずみずしい口当たりと上品で爽やかな甘さでした。お抹茶は一つのお茶農家さんのお茶だけを利用したお抹茶版シングルモルトだというご説明がありました。普段のお稽古やお茶会では、お茶屋さんによって複数の品がブレンドされたお抹茶を飲むことが多いので、とても貴重な体験でした。
お茶碗などのお道具も回していただいて近くで拝見しました。主茶碗は青い釉薬の上に金を重ねたもので、全面に金が塗られている華やかさがありながら、シックで重厚感のあるお茶碗で、持ち上げた手に吸い付くようなずっしりとした重みがあったのが印象に残っています。茶器はツタの根元をくりぬいて作った工芸品だそうです。私がいつも通っている立教大学の校舎にもツタが絡んでおりよく目にしますが、茶器になるほど太いものがあるとは想像もつかず驚きました。側面に木の幹とも異なる独特の模様があり趣を感じました。茶杓は堀先生がご自身で削ったもので、お釜は堀先生のお父様がお作りになったものだそうです。
参加する前は、大人に混ざってお茶会に参加するのは初めてのことで少し緊張していました。しかし、お席の前後やお茶室の中で、石州流の歴史やお道具の由来に加えて、今回の月釜を開催するまでのことや、今後開催するイベントについてもたくさんお話を伺い、初めから終わりまで和やかな雰囲気で心穏やかで楽しい時間を過ごすことができました。お客様に新潟のよさをお伝えしたい、親しみをもって楽しんでいただきたい、という堀先生の思いを感じ、おもてなしの心についても学ばせていただきました。
堀先生は、今後も月釜やその他イベントを企画しているとおっしゃっていて、今回の取材とは異なるお話を聞くことができるかもしれません。ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
堀先生とご社中の皆様、関わってくださった方々、お招きいただきありがとうございました。
月釜の予約はオンラインでお申込みいただけます。
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