和三盆工芸菓子 象東
わさんぼんこうげいがし ぞうとう
和三盆糖を菓子木型に詰めて押し固め、作業台に打ち付けて取り出す。東京・東久留米市にある「象東」は、この至ってシンプルな工程から生まれる打ち菓子(打ち物)を専門とする和菓子店です。打ち菓子といえば穀物の粉に砂糖などを混ぜて作る落雁がその代表格ですが、「象東」では和三盆糖のみを使うことから、自社商品を「和三盆工芸菓子」と謳っています。
「象東」の打ち菓子は、多彩な色と意匠が魅力です。紅、橙、青、紫、緑、黄緑、黄それぞれに濃淡のバリエーションがあり、これに和三盆糖ならではの純白が加わります。菓子木型も年々増え続け、今では伝統柄からオリジナルまで200種類以上になりました。商品は店頭のほかオンラインショップで入手でき、富士山、老松、亀、鶴、桜などおめでたい意匠を詰め合わせた「伝統意匠吉祥尽くし」(10個入りと20個入りがある)が人気です。
店主の三浦和子さんが打ち菓子作りの世界にいざなわれたきっかけは、十数年前に四国を旅した際、ふと心惹かれて購入した菓子木型でした。山桜材に細かく手彫りされた桜や老松の意匠の愛らしさ。打ち菓子作りのワークショップも体験し、三浦さんの中に「これを仕事にできないだろうか」という思いが生まれます。そして1年後には工房を立ち上げました。「初めは冠婚葬祭の進物として販路を広げるべく営業に回りましたが、価値を認めてもらえませんでした」。ある料理人がデザート用に購入してくれたのをきっかけにホテルや旅館、商社から注文が入るようになり、やがてお茶の世界での知名度も上がっていきました。
三浦さんは「私にとって打ち菓子は、かけはしのようなものです。それまで知らなかった和菓子の世界、お茶の世界へ私を連れていってくれました」と話します。お茶会の趣向に合わせたオリジナルの打ち菓子を頼まれることも増え、また、ご要望に応じて出張も承っています。裏方から木槌の音をお聞かせして席を盛り上げたり、実際に打つところをお客さまにお見せするといったパフォーマンスも行います。「先生方のご指導のもと、お茶の心に添うよう真摯に取り組んできました。これからもお茶文化の一端を担わせていただきたいと思っています」
大学生によるお店訪問レポートはこちら
https://chanoyumaptokyo.jp/uncategorized/reportzoto/
日本の四季と文化を表現した伝統意匠を詰め合わせた「伝統意匠吉祥尽くし」木箱仕様10個入り2,750円(税込)。意匠は下から扇面、丸鯛、亀、桜、鶴、たけのこ、稲穂、巻貝、老松、富士山。
細部まで彫り込まれた熟練の技と、高品質な和三盆から愛らしい打ち菓子ができあがります。和三盆は繊細な風味が持ち味で、舌の上でふわりと溶けます。
「象東」の財産である菓子木型各種。現在、制作できる職人は全国で数人しかいないそうです。木型の文化も大切にしたいと三浦さんは考えています。
店舗兼工房は、東久留米駅に近いビルの2階にあります。「象東」という屋号は、和三盆の産地・香川の象頭山(ぞうずさん)と、地元である東久留米から一文字ずつとりました。
和三盆糖をザルでふるってきめを整えたら型に詰め、作業台に打ち付けて取り出します。写真の意匠は紅富士。このあと機械で一日、さらに乾燥剤を入れた密閉容器で10日間乾燥させたら検品し、パッケージして出荷します。
菓子は一つずつPP袋に入れています。もともとエッジのくずれ、移送中の欠けを防ぐために始めたアイディアでしたが、このままお茶席に出せる安心感にもつながり好評をいただいています。
店主の三浦和子さん。「当店の強みは、小口でのご注文にお応えできることです。これからも質の高い商品をお届けしていきます」
所在地 | 東京都東久留米市本町1-4-29 |
TEL | 042-420-7104 |
FAX | 042-420-7084 |
営業時間 | 10:00〜18:00(土曜は12:00〜18:00) |
定休日 | 日曜、祝日(他に臨時休業の場合あり。ご来店の際はお電話でお確かめください) |
アクセス | 西武池袋線「東久留米駅」西口から徒歩2分 |