茶室 妙深庵
ちゃしつ みょうしんあん
緑豊かな世田谷公園にほど近い下馬という閑静な住宅街に、シックな黒いタイルと竹の植栽に囲まれた瀟洒なマンションがあります。その1階に本格的な茶室があるとは外からは想像もつきません。エントランス脇の重厚な扉から一歩踏み入れるとその先には驚きの空間が広がります。まずマンションの裏手には広々した庭園が広がり、正門から茶室に誘う古き石畳などに目を奪われます。そして茶室に入るとグランドピアノが置かれたゆったりしたホールがあり、その先に広い縁側が巡らされた六畳広間、八畳広間と続きます。襖を寄せるとホールと一体化した大広間となり、また、縁側に腰掛けると、壁を大きく切り取ったはめ込み窓から四季移り変わる庭の景色が見えるという趣向も素敵です。そして露地の奥の蹲の先に、静寂さを感じさせる四畳半の茶室が佇みます。
この茶室「妙深庵」は平成 26 年(2014)6 月に創設されました。「妙深庵」の名は、庵主の清水宗深先生が賜った法名「妙雪」と茶名「宗深」の一文字ずつを取り名付けたもので、「姿、形、心、ありのままの自然な妙なる深さを求めて、侘びた庵となれますよう」との思いが込められています。
「妙深庵」では宗深先生が指導する茶道教室と、お茶室貸出を行っています。お茶室貸出ではこれまで、先生方主催の茶事・茶会をはじめ、大学や民間企業の茶道部の稽古などにも活用され、台所と水屋も設置されるなどの使い勝手の良さから好評を得てきています。更に、グランドピアノを置いたホールと一体化して使用できることから、音楽とコラボレーションした茶会の開催など用途は可能性を秘めています。
2024年7月20日(土)、21日(日)には、宗深先生の主催で妙深庵10周年記念茶会「ヴァイオリン・ピアノ&お茶のハーモニー」が開かれました。八畳広間にしつらえられた立礼席にてお茶と点心が供されたあと、バイオリニスト・松田理奈さんの演奏を楽しむという贅沢なイベントでした。
グランドピアノが置かれたホールから六畳広間、八畳広間と、襖を寄せるとあたかも舞台のように続き、名栗加工された縁側も印象的です。音響も良く、定員60名ほどの演奏会も開催できます。
印象的な八畳広間では円窓を生かした様々な趣向の茶事、茶会も出来ます。写真のお軸は円能斎賛、丘秀画「一休に門松之絵」。
日本造園設計作庭の露地と蹲。この左奥に四畳半の茶室があります。
「妙深庵」の扁額は、台風で倒れてしまった庭の八重桜の古木を活用されています。揮毫は京田辺市の酬恩庵一休寺のご住職にお願いしました。框は煤竹で、壁を塗りまわした室床。お軸は伝一休宗純の墨蹟です。
清水家は世田谷地元の旧家。作庭から100年を数えるという庭がその歴史を伝えています。マンション建設にあたって取り壊した家屋の瓦を、石畳の縁取りに再利用しました。
13歳で茶道を始め、現在は裏千家教授の清水宗深先生。「忙しいときほどお茶、気持ちがふさいでいるときほどお茶。お稽古といえど一服いただけば雑念が払えます。そこがお茶の素晴らしいところです」
3月に八畳広間でおこなわれた初炭の稽古の様子。風炉先屏風は広瀬拙斎筆の竹絵に淡々斎宗匠の讃「断紅塵(こうじんをたつ)」。
茶道教室の日は六畳広間に和親棚を置いておき、生徒さんが自由に稽古できるようにはからっています。
”和親棚の稽古の様子。この日は座礼の生徒さんたちにも参加してもらいました。詳細はご相談ください。
妙深庵10周年記念茶会「ヴァイオリン・ピアノ&お茶のハーモニー」開催当日、点前座に着き八畳広間の立礼席に着席された皆さんに挨拶する宗深先生。
正客は酬恩庵一休寺のご住職がつとめられました。羽箒の研究家で『茶の湯の羽箒 知られざる鳥の文化誌』(淡交社刊)の著者・下坂玉起さんも列席されていました。
点心は東京・南青山の創作和食の店「東京十月」製。ごはんは一休寺納豆の混ぜご飯が供されました。
国内外の主要オーケストラ、著名な指揮者との共演も多いバイオリニスト・松田理奈さんを迎えたサロンコンサートでは9つの曲が演奏されました。華やかに、ふくよかに響きわたるバイオリンの音色は素晴らしく、ホールと茶室が一体化した「妙深庵」ならではの魅力あふれるひとときでした。
http://www.waqua.jp/
Mail: info@waqua.jp
*茶道教室の通常稽古のカリキュラム、茶室貸出の詳細は上記のHPのフォーム又はメールにてお問い合わせください。
所在地 | 東京都世田谷区下馬1-19-14 ガーデンパーク下馬1階 |
アクセス | 渋谷駅西口からバス15分 東急東横線中目黒駅からバス10分いずれも「下馬一丁目」下車、徒歩1分 |