森の恵
もりのめぐみ
数寄屋建築を得意とし、ライフスタイルにあった茶室づくりを提案する工務店・森の恵。そのオフィスにも、2つの茶室があります。そのひとつである「木乃き庵」は、数寄屋の名工と謳われた三代目木村清兵衛によって80年前に建てられた鎌倉市の茶室の待合を移築して、当時の古材を生かし新しい茶室に再生したものです。茶室づくりを考えているかたのヒントとして、モデルルームとして公開しているほか、この茶室を使って松永泰輔さんはお茶の普及を目指して、月釜を企画しています。
森の恵は、昭和30年(1955)に泰輔さんの祖父が創業。横須賀に生まれ、大工として社などの建築も手がけていました。茶室づくりは、二代目の現社長である父の松永賢司さんが始めました。賢司さんは知識を得るために習い始めた茶道に魅せられ、茶人として自身の稽古場を持つまでになりました。賢司さんの手掛ける茶室は、大工としての技だけでなく、茶人として施主と同じ目線で、生活にも馴染みつつ使い勝手が良いと評判で、その実績を年々増やしています。泰輔さんも、裏千家学園に学び茶道の世界に身を置いて、大工である弟とともに、家族で茶の湯を楽しみながら、工務店・森の恵の次代として、茶室づくりを提案していこうとしています。
自社のオフィス内に設けられた茶室「木乃き庵」は、由緒ある古材が高度な大工の技で生かされています。取り込む光の陰影によって厳かな雰囲気に。
「木乃き庵」の水屋。たくさんの光が取り込まれて美しく、床下を生かした大容量の収納も確保しています。森の恵が提案する茶室は、マンションでも戸建のリフォームでも、見事に水屋も含めた動線が確保され、フレキシブルに空間を生かして、適切に設計されています。
もうひとつの茶室「妙松泉(みょうしょうせん)」とオリジナルの立礼棚。
屋内で2つの茶室をつなぐ露地には手水鉢もあります。
国産の無垢材にこだわる森の恵の住まいづくり。打ち合わせスペースにも木のぬくもりが広がります。茶室はこの奥に。
鎌倉の「一条恵観山荘」に納品した、茶室で使える腰掛け椅子。2つを入れ子式に組み合わせて収納できます。こうした目的に即した便利なプロダクトも製作しています。
泰輔さんも「木乃き庵」で自身の稽古場を持ちながら、誰でも気軽に参加できる月釜も企画しています。「とくに若い人に茶の湯をもっと身近に感じてもらいたい。茶の湯は楽しいもの。お茶が好きになって、茶室づくりももっと身近に考えていただき、気軽に相談していただきたい」と語ります。
施工例「葉葉庵茶室」
ツーバイフォー工法で建てられた住宅の八畳洋間を京間四畳半の茶室に改修。周囲が開けた風通しのよい立地の魅力を生かすため、南側に色紙窓、西側に書院窓を設けました。とても明るい茶室ですが、お点前の場には光が入らないよう工夫されています。
水屋から茶室を見る。水屋は階段下を有効利用しました。収納棚を取り付けた部分は増築です。
茶室外観と露地。外壁は藁入りリシン吹き付け仕上げです。塀は南側(正面)は杉皮、西側は青檜葉を用いています。
施工例「磯村邸陽明菴」
平地を掘り下げた半地下のホビールームを京間八畳の広間に改修。京都・唐長の唐紙が空間を上品に引き締めています。
庭の緑とつくばいが望める半円形の下地窓、露地から差し込む光をやわらかく受け止める、入り側の障子窓と茶室の障子戸の重なり。得てして堅苦しくなりがちな広間をなごやかな空気で満たす窓の演出です。
施工例「港谷邸柳翠庵」
広いリビングの一角に設けた、オーソドックスな様式の四畳半の茶室。赤松の網代天井がぬくもりを添えています。隣接する洋間の掃き出し窓越しに露地が見えます。
森の恵のオフィスのレンガ張りの外観。大工の育成にも力を入れています。
所在地 | 神奈川県横浜市栄区公田町1605 |
TEL | 045-890-1213 |
TEL | 045-890-1214 |
営業時間 | 17:00~21:00 日曜・祝日休 |
アクセス |
JR京浜東北・根岸線「本郷台駅」から徒歩15分 |
森の恵 社長。松永賢司氏が代表を務める「一般社団法人 現代茶道塾」では、茶道に関する各種教室やセミナーなどを行っています。
お問い合わせ
http://www.gendai-chadojuku.jp/
事務局TEL 045-410-8191