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茶の湯菓子 亀屋萬年堂

ちゃのゆがし かめやまんねんどう

愛らしい干菓子と端正な上生菓子
作り手の真摯な姿勢が伝わる

「茶の湯菓子 亀屋萬年堂」は明治38年(1905)の創業以来、店を持たず、注文を受けて作る茶席のお菓子ひとすじに歴史を重ねてきました。増上寺、護国寺、日枝神社、湯島天神など名だたる寺社の献茶添え釜をはじめ茶会、茶道教室で用いられ、また、樹木希林さんが茶道教室の先生を演じて評判を呼んだ映画『日日是好日』(2018年公開)では茶席の干菓子を担当しました。

初代の長野嘉吉さんは京都発祥の老舗「亀屋和泉萬年堂本店」(中央区銀座)で分家後、東京駅八重洲に干菓子の工房を構えました。時を経て現在は、商談と受け渡しの場として吉祥寺に本社を、10人ほどの職人さんが働く工房を西東京市に置いています。2代目までは干菓子専門でしたが、3代目当主の長野祐治さんはその伝統を受け継ぐとともに上生菓子も作り始めました。白餡に砂糖と餅粉を練り込んだ「練り切り」、餡玉のまわりにそぼろ状の餡をつけた「きんとん」など、吟味した食材で作るお菓子が亀屋萬年堂の自慢です。また、祐治さんは淡交カルチャー教室「和菓子講習会」の講師も務めています。

上生菓子作りは今は息子の長野貴弘さんが担っています。貴弘さんは茶席の趣向に合わせた創作菓子も得意で、「これは何を表現しているのだろうとお茶席で話題になるような、抽象的なお菓子を父と考えるのが楽しいですね」と話します。吉祥寺本社では日曜日に、西東京市工房では平日に上生菓子1つ300円〜、干菓子1袋400円〜などを店頭販売しています。熟練の技の干菓子、若い意欲に満ちた上生菓子をぜひご家庭でも味わってみてください。


すすきの焼き印を押した味噌煎餅の周りに、秋の干菓子をちりばめました。麦こがしの稲穂、雲平のもみじと菊の葉、餡打ちの栗、柚子餡に和三盆をまぶした銀杏など。


上)落雁 菊 下)雲平 流水


春の干菓子の一例。手前から時計回りに福寿草、つくし、わらび、蝶々二種、桃の花、観世水。


5月の干菓子から、あやめ、あやめの葉、観世水。


左)麦焦がし 源氏香 右)錦玉 氷室


四季折々の練り切り。左上から時計回りに 着せ綿、竜田姫、都の春、紅葉、雲平、五輪。


上生菓子いろいろ。上から時計回りに初雁、梅が香、桔梗、唐衣、姫菊、真ん中はこの花きんとん。


蓮根羹 桔梗重ね


吉祥寺本社は吉祥寺駅から徒歩圏内の住宅街にあります。


口中に広がる小豆の風味がやさしい水ようかんは400g2000円(税別)。
日曜限定で店頭にて1つ250円で販売しています。


しずく 飴のようなゼリー300円(税別)


創業以来受け継がれている、明治から大正時代に作られた落雁の木型。こうした細工が彫れる職人も今はほとんどいなくなってしまったそうです。


長野祐治さんと息子の長野貴弘さん。貴弘さんは理科系の大学を卒業してこの道に入りました。「材料の分量や工程の時間など、父のように昔ながらの塩梅ではやりづらくて、計数化しています」


西東京市工房できんとん「乱菊」を作る貴弘さん。


吉祥寺本社では、花月菴流煎茶道を修めた祐治さんが指導する煎茶点前が体験できます。詳細はお問い合わせください。


7月のこの日は身内による煎茶席を拝見しました。茗主は祐治さん、正客は貴弘さんの妻有希さん、次客と三客はお孫さんです。掛幅は江戸時代前期の画僧百拙元養の「渓声廣長舌」。




花月菴流では茶葉は玉露を使います。銘々の茶碗を拭き清め、急須から注ぎ分けます。


茶碗は金襴手鳳紋。純粋にお茶をおいしく喫することを第一とする煎茶道では、お茶を幾口で飲み干すという決まりはありません。お茶の香りと甘さを味わいながら自由に飲みきり、茶碗は茶托の上に伏せておきます。



「煎茶式点前のお稽古ではお茶は三煎(三碗)お出しします。一煎目と二煎目の間に主(生)菓子、二煎目と三煎目の間に干菓子を召し上がっていただきます。」と祐治さん。この日の主菓子は石清水、干菓子は朝顔、せせらぎ、朝顔の葉でした。


三煎目は瓶台にのせた急須を注ぎ回します。飲み干した茶碗は伏せずに茶托に置き、茗主に挨拶を返します。

 

茶道会館  明々軒菓子席のレポートはこちら

 

茶の湯菓子 吉祥寺亀屋萬年堂
http://kameyamannendo.sun.bindcloud.jp/index.html
https://www.kameyamannendo.co.jp


吉祥寺本社

住所 東京都武蔵野市吉祥寺東町1-25-14
TEL 0422-22-6466
店頭販売 日曜のみ(期間限定)、10:00〜18:00、なるべく予約を
アクセス JR中央線「吉祥寺駅」東口から徒歩8分

西東京市工房

住所 東京都西東京市泉町1-9-23
TEL 042-467-1471
FAX 042-464-3459
店頭販売 10:00〜18:00
定休日 日曜
アクセス 西武新宿線「田無駅」から徒歩20分